首の痛み
頚肩腕症候群(肩こり)
頚肩腕症候群(肩こり)とは
頚肩腕症候群は、首周辺、肩、上腕、前腕、手、指における筋のこり、痛み、しびれなどの症状を包括した疾患です。
頚肩腕症候群(肩こり)の症状
肩から腕にかけての痛みやしびれ、腕や手指のしびれを伴うことがあります。また、重度になると頭痛やめまいの原因となることもあります。痛みの程度は軽いものから激しいものまで様々で、一般的に頚椎を後ろへ反らすと痛みが増すため、上を見たりうがいをすることが不自由に感じられることがあります。また、上肢の筋力低下や感覚の障害もみられることがあります。
頚肩腕症候群(肩こり)の原因
神経や血管への圧迫、筋肉への負荷により、首周辺や肩、背中、腕、手、手首などに痛みやこり、しびれが生じます。以下が主な原因とされています。
- 同じ作業を繰り返すこと(例: パソコン入力)
- 特定の部位を長時間動かし続けること(例: 肩から手の指までの作業)
- 長時間の作業による筋肉疲労や姿勢の悪さ
- 長時間同じ姿勢でのデスクワーク
- 心因性ストレス
- 肩こりや首の凝りがある中で強制的な作業や仕事の継続
頚肩腕症候群(肩こり)の治療方法
通常、消炎鎮痛剤や筋弛緩剤が使用されます。理学療法(温熱療法、電気刺激療法、関節可動域改善訓練、肩のストレッチング、筋力強化訓練、肩の体操)も有効です。症状が重い場合には、神経の働きを抑える局所注射療法(肩甲上神経ブロック・トリガーポイントなど)や点滴治療も行われることがあります。
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニアとは
頚椎には、脊髄が通っており、脳から手や肩への信号が伝わっています。頚椎を構成する椎骨と椎骨の間には、クッション性のある椎間板があり、これが何らかの原因で飛び出し、神経を圧迫するのが「頚椎椎間板ヘルニア」です。
頚椎椎間板ヘルニアの症状
ヘルニアが飛び出す場所によって症状が異なります。神経根の圧迫では、頚部や肩、手など一側性の痛みやしびれが主になります。具体的な症状として、
- 頚部の痛みやしびれ
- 肩こり
- 手や腕の感覚障害、しびれ
- 握力低下
- 上肢の筋力低下
脊髄の圧迫では、両側性の症状や下半身の症状が起こります。具体的な症状として、
- 脚が突っ張る
- 歩きづらい
- 膀胱直腸障害
- 両手の細かい動きができない
神経根症状および脊髄症状の両方が起こり、上半身、下半身のどちらにも症状が起こる場合もあります。
頚椎椎間板ヘルニアの原因
椎間板の機能低下が最大の原因であり、加齢による老化が主な要因です。近年の生活習慣やデバイスの利用も負担を増大させています。
頚椎椎間板ヘルニアの治療方法
保存療法
症状が強い場合は、安静が必要です。頚椎カラー装具や鎮痛薬、神経ブロックで症状の緩和を図ります。リハビリでは、筋肉の硬さを改善し、日常生活の指導を行います。生活習慣の見直しも重要であり、特に姿勢に注意が必要です。
手術療法
保存療法で改善しない場合には手術が考慮されます。特に麻痺症状や脊髄症状が伴う場合に選択されます。
頚椎症性脊髄症
頚椎症性脊髄症とは
頚椎症性脊髄症は中高年の人に多く見られる首の疾患であり、頚椎症と脊髄症が結びついて発生します。頚椎症は首の骨に長期間の負担がかかり、それによって椎骨や椎間板に変化が生じる病態を指します。これにより脊髄を取り巻く脊柱管が狭まり、脊髄が圧迫されることが頚椎症性脊髄症の特徴です。
頚椎症性脊髄症の症状
まず、手足のしびれから自覚することが多く、進行するとボタンがかけられない、字が書きにくいなどの日常動作に不器用さ(巧緻運動障害)がみられるようになります。また、歩行が不安定(痙性歩行)となり、つまずきやすく、転倒を繰り返すようになります。尿がでにくい、漏らしてしまう、残尿感があるなどの排尿障害を伴うこともあります。
頚椎症性脊髄症の原因
この疾患の主な原因は脊髄の圧迫です。加齢に伴う椎間板や靭帯の変性、不安定性などが影響して起こります。具体的な原因としては、骨棘の形成、椎間板の突出(ヘルニア)、靭帯の肥厚などが挙げられます。
頚椎症性脊髄症の治療方法
保存療法
軽度の症状には保存療法が選択されます。痛み止め、ビタミンB12製剤などの薬物療法、物理療法、コルセットの装着や姿勢の指導などで神経の回復を促進します。
手術療法
症状が重症化し巧緻運動障害や歩行障害がみられた場合は手術が必要となります。
椎弓形成術や前方除圧固定術などの手術が行われ、脊髄の圧迫を緩和します。
頚椎症性神経根症
頚椎症性神経根症とは
頚椎症性神経根症は、主に20~40代の方に見られる疾患です。長期間の首への負担により頚椎が変性し、骨棘が形成されることで頚椎にある椎間孔が狭くなり、結果として肩や腕に痛みや痺れなどの症状が生じます。
頚椎症性神経根症の症状
主な症状は肩から腕にかけての痛みや、腕や手指の痺れです。痛みの強さは軽度から激しいものまでさまざまで、特に頚椎を後方に反らしたときに症状が強くなります。
頚椎症性神経根症の原因
頚椎症性神経根症の主な原因は、加齢や不良姿勢による頚椎症の発症です。椎間板の変性や骨棘の形成が神経根の圧迫を引き起こします。近年では、スマートフォンやパソコンの利用が増え、不良姿勢が増加していることも要因とされます。
頚椎症性神経根症の治療方法
保存療法
初期の症状に対しては、安静を保ちつつ頚椎カラーを使用した装具療法や、痛み止めや湿布などの薬物療法、頚椎牽引や干渉波などの物理療法などを行います。多くのケースで保存療法によって症状が改善することが期待されます。
手術療法
まず内服やリハビリを含む保守的治療を行います。それでも症状が長期間改善せず、強い痛みや麻痺が続く場合には手術を検討します。
胸郭出口症候群
胸郭出口症候群とは
胸郭出口症候群は、手のしびれや腕の筋力低下などの神経症状を引き起こす疾患の一つです。この病気は首と胸の間に位置する胸郭出口と呼ばれる通路で、神経や血管が頚椎から肋骨と鎖骨の間を通り、腕に至る経路で圧迫されることによって発生します。
胸郭出口症候群の症状
症状には腕や手のしびれ、疼痛、筋力低下などが挙げられます。これらの症状はゆっくりと進行することが一般的で、姿勢によって変動することがあります。特につり革につかまる時や、物干しの時のように腕を挙げる動作で症状が現れやすくなります。また、首や肩周囲の疼痛やこりも感じることがあります。
胸郭出口症候群の原因
長時間の悪い姿勢、重いものを頻繁に持ち上げる労働者や、なで肩の女性、肩こりがある人などが発症しやすいとされています。また、頚肋という肋骨の遺残物が神経を圧迫することが原因となっていることもあります。
胸郭出口症候群の治療方法
保存療法
生活指導:腕を持ち上げるような動作を避けるなど、普段から姿勢や動作に気を付けることが大切です。
薬物療法:しびれを和らげるための内服薬が処方されることがあります。
理学療法:姿勢の矯正や特定の筋肉の緊張を和らげるためのリハビリが行われます。特に、牽引療法を含めた理学療法が効果的とされています。
手術療法
保存療法の効果がなく、生活に支障をきたす場合やスポーツ活動が制限されるような状況であれば、手術が選択されることがあります。